KNOWLEDGE猫の乳がんって?

知ることから始めよう。
猫の乳がん

乳がんは乳腺に発生する悪性腫瘍です。猫の乳がんについて、まだまだ知られていないことがたくさんあります。大切な命を守るため、正しい知識を知ることから始めましょう。

POINT

  • 猫の悪性腫瘍は
    「乳がん」がトップ
  • 発生リスクのピークは
    12歳前後
  • 2cm以下で発見できる
    かが予後に影響

    ※病気の経過と結末に関する医学上の見通し。

MOVIE

動画でも詳しく紹介しています!

代表理事:小林哲也(獣医師)

Ⅰ.基礎知識

病気で亡くなる猫ちゃんの
約1/3が「がん」です。

病気で死亡した猫の死因のトップ10

病気で死亡した猫の死因のトップ10
病気で死亡した猫の死因のトップ10

出典:Animal Health Survey, Morris Animal Foundation, 1998

猫の悪性腫瘍で
一番多いのが「乳がん」です。

猫の悪性腫瘍トップ10

猫の悪性腫瘍トップ10
猫の悪性腫瘍トップ10

出典 : Veterinary Oncology Vol.8, Interzoo, 2015

猫の乳腺の“しこり”は約80%が
悪性 といわれています。

猫の乳腺の“しこり”の原因

猫の乳腺の“しこり”の原因 猫の乳腺の“しこり”の原因

出典 : Veterinary Oncology Vol.8, Interzoo, 2015

Ⅱ.特徴

人や犬にも発生する乳がん。
でもその特徴は必ずしも
同じというわけではありせん。

リスクが
もっとも高まるのは
10〜12歳。

通常は中〜高齢で発生することが
多く、
中央値は12歳です。

※データを小さい順に並べたとき中央に置する値

ただし若くても油断は大敵にゃ ただし若くても油断は大敵にゃ

出典 : ノースラボ・データベース2015

99%がメスに
発生します。

ごくまれに、男の子にも見られるにゃ ごくまれに、男の子にも見られるにゃ

出典 : ノースラボ・データベース2015

4つのステージに
わかれます。

乳がんの進行度合いで
4つのステージにわかれます。
大きさ・リンパ節転移の有無・
多臓器転移の有無で
判断され、
早いステージであるほど、
助かる可能性が高くなります。

変更型 臨床病期分類

変更型 臨床病期分類 変更型 臨床病期分類

出典 : McNeill CJ, JVIM, 2009

ホルモンバランスと
関係が深い。

乳がんの発生は、ホルモンバランスと
関係があることがわかっています。
そのため早めの不妊手術が
乳がんの発生率を
低下させる
ことが知られています。

不妊手術の年齢と乳がん発生低下率

不妊手術の年利と乳がん発生低下率 不妊手術の年利と乳がん発生低下率

出典 : Overlay B, JVIM, 2015

同時に複数
できることも!

猫には8コの乳腺があります。
そのそれぞれに乳がんが
発生する可能性が。
実際に33〜60%の確率で、
複数の乳がんが
確認されると
考えられています。

びっくりだにゃ びっくりだにゃ

出典 : Viste JR, Can Vet J, 2002
Mills SW, Vet Pathol, 2015
Gemignani F, JAVMA, 2018
Cunha SC, J Feline Med Surg, 2015
Hayes AA, Vet Clin North Am Small Anim Pract, 1985

転移の
リスクが高い。

乳がんの初診時のリンパ節
転移率は、
20〜42%にものぼると
報告されています。

乳がんの初診時におけるリンパ節転移率

乳がんの初診時におけるリンパ節転移率 乳がんの初診時におけるリンパ節転移率

Ⅲ.
もしも乳がんが見つかったら

万一乳がんが見つかったとき、
獣医師はさまざまな観点から
今後どのように病気が進行するかを
予想し、治療を行います。
代表的な判断のポイントを
3つご紹介します。

01 腫瘍の大きさ

ご家族が未来を
変えられるかもしれない
重要なポイント。
2cm以下で見つけることで、
予後が大きく変わります。

腫瘍の直径と生存期間の中央値

腫瘍の直径と生存期間の中央値 腫瘍の直径と生存期間の中央値
腫瘍の直径と生存期間の中央値 腫瘍の直径と生存期間の中央値

出典 : McNeill CJ, JVIM, 2009

腫瘍が2cmを超えると、生存期間が大幅に短くなることがわかっています。これは3cmを超えると多臓器転移率が上がるため。ただし小さくても転移を引き起こすなど致死性の高いものもあるので、きちんと検査を受けることが大切です。

02 リンパ節転移

リンパ節転移が見られるかどうか。
生存期間に大きく関わります。

調べるには検査が必要にゃ 調べるには検査が必要にゃ

出典 : Gemignani F, JAVMA, 2018
Amorim FV, J Feline Med Surg, 2006
Seixas F, Vet J, 2011
Mills SW, Vet Pathol, 2015
Novosad CA, JAAHA, 2006
Cunha SC, J Feline Med Surg, 2015
McNeill CJ, JVIM 2009
Borrego JF; Vet Comp Onco, 2009

03 グレード

グレードは1〜3に分けられます。
摘出した組織を検査センターで
精査し、
専門家が判断します

グレードがあがるほど死亡率が高まります。実際に見つかる乳がんのうち、グレード1は稀で多くがグレード2か3です。なかには腫瘍がまだ小さくてもグレードが高いものもあります。

術後1年の死亡率

術後1年の死亡率 術後1年の死亡率

出典 : Castagnaro M, J Comp Pathol, 1998
Seixas F, Vet J, 2011

Ⅳ.治療について

治療は獣医師とよく話し、
納得したうえで進めることが大切です。
ここでは代表的な治療例を
2つご紹介します。

01 乳腺片側切除・
両側切除

猫の乳腺はリンパ管で
すべて繋がっています。
そのため乳腺の片側、もしくは両側を
すべて切除する手術が
再発防止のために
有効だとわかっています。

「大きな手術は痛そう、かわいそう」という気持ちはうれしいけど、もしお医者さんから提案されたら、ことわらないで欲しいにゃ 「大きな手術は痛そう、かわいそう」という気持ちはうれしいけど、もしお医者さんから提案されたら、ことわらないで欲しいにゃ

02 化学療法

手術後に高リスク群だと
判定された場合、
化学療法を用いることがあります。
化学療法とは、
薬を用いた治療のことで、
「抗がん剤治療」ともいわれます。

人の抗がん治療とはちがうから'毛が抜ける''吐き気が止まらない'などのイメージを当てはめないでにゃ 人の抗がん治療とはちがうから'毛が抜ける''吐き気が止まらない'などのイメージを当てはめないでにゃ